2011.6.26 update
ニューヨーク市は、ブルームバーグ市長の方針で、2009年よりメディア産業の振興に力を入れており、マンハッタンのフラットアイロン地区は、デジタルメディアやSNSの会社が集まる新しいメディアビジネスのメッカ的存在になった。
20年前までは、写真家のスタジオやレコーディングスタジオが集まるクリエーティブ・ビジネスの多く存在するエリアであり、クリエーティブエーシーがいくつも誕生した地でもある。
その目貫通りである21丁目にアニメ専門制作スタジオのフレドレータースタジオ( Frederator's Studio)がある。このスタジオは、1998年に設立され、当時から、主にアニメ専門チャンネルNickelodeonやCartoon
Network向けのアニメーション番組や劇場公開用の作品を制作してきたが、ここのCEOは新規分野のパイオニア・精鋭したマ-ケッターとして著名な人物である。
フレドレーター・スタジオの創立者兼CEOのフレッド・サイバート氏は、MTVの初代クリエーティブ・ディレクターを務め、MTVの急成長に大きく貢献をした人である。1980年代に続々と主流メディアとしての地位を築いたテーマ性の高いケーブル・チャンネルの個々のブランド構築を行った。新しいメディア形態の台頭を喜んで歓迎した勇敢な人でもあり、MTVがインターネット上にMTVオンラインをスタートした時には、初代社長を務めた経験を持つ。彼が設立したこのフレドレーター・スタジオは絶えず、新しいメディアに積極的に挑んできたパイオニア精神に充ちた製作スタジオである。フレッド自身は、映画やケーブルテレビ向けのコンテンツを企画制作すると同時に、2007年には、インターネットベースに、Next
New Networksをケーブルテレビ時代からの仲間と設立し、 インターネット上にてコンテンツを見せるネットワークを開始し,同スタジオでは
Next New Networks上にて、アニメ専門チャンネルである チャンネル・フレドレーターをスタートしている。
このNext New Network(NNN)は広告とスポンサーシップが収入ベースの無料サービスであるが、コメディ、フード、インディ映画など、約75-100のチャンネルを持つまでに成長した。2010年には、毎月視聴回数2億ビューを超すグローバルなインターネットTV会社として話題となり、今年の3月には、You
Tubeに買収をされ注目をあびたばかりの会社である。
キャリアをスタートして、以来、30年。刻々と進化し続けるメディアの業界において、絶えず新しいものが生まれるところに身をおき、新しいビジネスをクリエートしてきたビジョンを持つフレッドの回りには、彼をメンターとするインターネットのスタートアップの若い起業家が数多い。
私は、ケーブルTV時代に彼と知り合い、それ以来、連絡を取り合ってきたが、新しいビジネスがもつクリエーティブな側面を絶えず、好奇心、冒険心を持って、サポートしてきた彼のエネルギーには感心してきたし、これぞ、ニューヨーカー、これぞ、アメリカ人と思ってきた。彼自身、とても愉快な人物なのである。
現在、フレドレータースタジオではチャンネル・フレドレーターが提供するチャンネル数を増やし、内容もさらに多岐化していく準備を進めている。メディアの様態はなんであろうと、個々のチャンネルのブランド・メッセジーを構築し、グローバルな視聴者にリーチをするために必要なノウハウは変わらない。こだわりなく、自分の知恵と体験をシェアすることのできるリーダーはやる気のある若者を鼓舞し、知恵と資金を求める若者を集め、ビジネスを自然に促進していく。変化を良しとするアメリカでも、メディアの変動に躊躇するベテランは数多い。変化に対応する必須の条件は、楽観主義なのかもしれない。
竹内 道